銀行はなぜ儲からなくなった?|ネット時代に「銀行のビジネスモデル」が崩れ始めた理由

銀行の建物がデジタル化してスマートフォンのネットバンキングへ移行する様子を表現した、銀行ビジネスモデルの変化をイメージする画像。

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「銀行は昔ほど儲からなくなった」

そんな話を聞くことがあります。

実際、銀行業界では店舗の統廃合、ATMの削減、手数料の見直し、ネットバンキングへの移行など、大きな変化が続いています。

一方で、最近の銀行決算を見ると、必ずしも「銀行が儲からなくなった」とは言えません。

日本銀行によると、2025年度は大手行・地域銀行とも当期純利益が増益となり、円金利の上昇によって貸出金利息などの資金利益も増加しました。

では、銀行は本当に苦しくなっているのでしょうか。

ポイントは、銀行の「利益」ではなく、「ビジネスモデル」が変わっていることです。

この記事では、銀行がどのように利益を生み出してきたのか、そしてなぜネット時代にその仕組みが大きく変わり始めたのかを、できるだけ簡単に解説します。

そもそも銀行は、どうやって儲けてきたのか?

銀行の基本的な仕事は、非常にシンプルです。

「お金を集めて、お金を貸す」

これが銀行ビジネスの中心です。

例えば、銀行が預金者から100億円のお金を集めたとします。

その資金を企業や個人に貸し出し、3%の金利を受け取る。

一方、預金者には0.1%の利息を支払う。

単純化すると、

3%-0.1%=2.9%

この差が銀行の重要な収益源になります。

もちろん実際には、貸倒れリスク、職員の人件費、店舗費用、システム費用、預金保険料など、さまざまなコストがかかります。

それでも基本構造は、

預金 → 融資 → 金利差

です。

銀行にとって、この「金利差」は非常に重要でした。

昔の銀行は「大量のお金を集めること」に意味があった

ここが、銀行というビジネスを理解する重要なポイントです。

昔は、今ほど簡単にお金を移動できませんでした。

給料は銀行口座に振り込まれ、公共料金も銀行口座から引き落とされる。

企業も銀行から融資を受ける。

個人も住宅ローンや自動車ローンを銀行から借りる。

つまり、

「お金を持っている人」と「お金を必要としている人」の間に銀行が入る

ことに、大きな価値がありました。

銀行には店舗があり、窓口があり、通帳があり、現金を管理するATMがありました。

そして、企業や個人にとって、

「銀行に行かなければお金を動かせない」

という時代が長く続きました。

だからこそ、銀行は大量の預金を集め、それを運用することによって巨大なビジネスを構築できたのです。

ところが、インターネットが銀行の仕事を変えた

ここから状況が大きく変わります。

インターネットが普及すると、

「銀行に行く」

必要性が急速に低下しました。

残高確認はスマートフォンでできます。

振込もスマートフォンでできます。

投資信託の購入もできます。

定期預金の申し込みもできます。

場合によっては、口座開設そのものをオンラインで完結できます。

つまり、

「銀行という建物」が提供していたサービスの多くが、インターネットに移った

わけです。

これは銀行にとって非常に大きな変化です。

ネット時代には「銀行の店舗」がコストになってしまう

昔の銀行では、店舗が重要な資産でした。

駅前に大きな店舗を構える。

窓口に職員を配置する。

ATMを設置する。

大量の紙を管理する。

こうした仕組みが銀行サービスの基盤だったからです。

ところがネットバンキングが普及すると、店舗に行かなくても多くのことができます。

すると、

店舗=便利なインフラ

だったものが、

店舗=維持費のかかる設備

という側面を持つようになります。

家賃、人件費、電気代、警備費、ATMの維持費などがかかるからです。

日本銀行も、地域金融機関について、店舗・人員配置の見直しや業務改革、DXの活用などを重要な経営課題として挙げています。

銀行の店舗が減っているのは、単なる「経費削減」ではありません。

銀行サービスそのものが、店舗中心からネット中心へ移動している

と考えた方が本質に近いでしょう。

さらに厄介なのが「銀行の中間業務」がネットで代替されること

銀行の仕事は、お金を貸すことだけではありません。

振込、送金、決済、資産運用、為替など、さまざまな金融サービスがあります。

しかし、これらもデジタル化によって効率化されました。

例えば昔なら、

「銀行窓口で振込用紙を書く」

という作業が必要でした。

現在ではスマートフォンから数十秒でできます。

つまり、

人間が窓口でやっていた仕事が、コンピューターに置き換わった

のです。

これは銀行にとって、非常に大きな意味があります。

人間が提供していたサービスには、人件費をかける必要があります。

しかし、デジタル化すると、同じサービスを低コストで大量に提供できます。

その結果、金融サービスそのものの価格競争が起こります。

ネット銀行が登場すると、さらに競争が激しくなった

ここで登場したのがネット銀行です。

ネット銀行は、最初から店舗網を前提としていません。

店舗を大量に持たない。

窓口職員を大量に配置しない。

紙の事務処理を減らす。

スマートフォンやWebを中心にサービスを提供する。

この構造なら、従来型銀行よりも固定費を抑えやすくなります。

そして浮いたコストを、

  • 金利
  • 手数料
  • ポイント
  • 利便性

などに還元できます。

つまり、

銀行サービスそのものが「店舗を持たなくても提供できる商品」になった

のです。

これは銀行業界にとって、かなり大きなゲームチェンジです。

「お金を集める」という銀行の強みも弱くなった

さらに重要なのが、情報の問題です。

昔は、銀行が持っている金融情報の価値が非常に高いものでした。

しかし現在は、インターネットで金融商品を比較できます。

住宅ローンの金利も比較できます。

投資信託の手数料も比較できます。

銀行口座のサービスも比較できます。

つまり消費者側が、

「どの銀行を選ぶべきか」

を簡単に調べられるようになりました。

昔は、

「近所にある銀行だから」

という理由で口座を作る人が多かったでしょう。

しかしネット時代には、

「金利が高い」

「手数料が安い」

「アプリが使いやすい」

「ポイントが貯まる」

など、具体的な条件で銀行を比較できます。

銀行側から見ると、これは顧客を囲い込むことが難しくなることを意味します。

では、銀行はもう儲からないのか?

ここは誤解してはいけません。

銀行が儲からなくなったわけではありません。

むしろ最近は、金利上昇によって銀行の収益が改善しています。

日本銀行によれば、2025年度は円金利上昇などを背景に資金利益が増加し、非資金利益も増加しました。大手行・地域銀行では当期純利益も増加しています。

つまり、

短期的には「金利上昇」が銀行に追い風

になっています。

しかし、長期的には別の問題があります。

それが、

人口減少と企業数の減少です。

人口が減ると、銀行の「お客さん」も減っていく

銀行は、お金を貸してくれる人がいなければ利益を得られません。

ところが日本では人口減少が進んでいます。

特に地方では、

  • 人口減少
  • 高齢化
  • 企業数の減少
  • 住宅需要の減少

などが重なります。

すると、

「銀行からお金を借りたい」

という需要そのものが減少する可能性があります。

日本銀行も、人口や企業数の減少によって国内の借入需要が構造的に減少することが、金融機関の収益力に長期的な下押し圧力を与える可能性を指摘しています。

これは非常に重要です。

銀行が努力しても、

そもそも借り手が減っている

という問題だからです。

銀行は「お金を貸す会社」から変わり始めている

ここまでを見ると、銀行業界の変化が見えてきます。

昔の銀行は、

預金を集める → 融資する → 金利差で稼ぐ

というモデルが中心でした。

しかし現在は、

融資+決済+資産運用+投資+保険+デジタルサービス

などへ収益源を広げています。

日本銀行の2025年度決算でも、資金利益だけでなく非資金利益の増加が収益改善に寄与しています。

つまり銀行は、

「お金を貸す会社」から「金融サービスを提供する会社」へ変わろうとしている

のです。

実は、銀行業界で起きていることは他の産業と同じ

ここが、この問題の面白いところです。

銀行だけが特殊なのではありません。

インターネットは、

「中間業者の仕事」を効率化する

という特徴があります。

昔は、

メーカー → 卸売業者 → 小売店 → 消費者

という流れでした。

しかしネット通販では、

メーカー → ECサイト → 消費者

という流れが可能になります。

銀行でも似たことが起きています。

昔は、

銀行店舗 → 銀行員 → 顧客

という流れでした。

現在は、

スマートフォン → アプリ → 顧客

という流れが増えています。

つまり、

ネット時代には「人間が間に入ること」そのものの価値が低下している

のです。

銀行が直面している問題は、実は社会全体で起きている「中間業務のデジタル化」の一部なのです。

それでも銀行がなくならない理由

では、将来的に銀行は不要になるのでしょうか。

私は、そうはならないと考えます。

なぜなら銀行には、ネットだけでは簡単に代替できない機能があるからです。

例えば、

  • 信用審査
  • 大規模な融資
  • 決済インフラ
  • 預金の安全な管理
  • 金融システムの安定
  • 企業への資金供給
  • リスク管理

などです。

特に企業融資では、

「この会社にいくら貸していいのか」

という信用判断が重要になります。

単純なネットサービスだけでは完結しません。

したがって、銀行そのものが消えるというより、

「銀行の仕事の中身が変わる」

と考えた方が現実的です。

これから銀行は「巨大な店舗」ではなく「金融インフラ」になる

今後の銀行を考えるうえで重要なのは、

銀行=建物

というイメージを捨てることです。

将来の銀行は、

店舗よりアプリ。

窓口よりオンライン。

紙よりデータ。

単純作業よりAI・自動化。

単純な融資より企業支援。

という方向に進むでしょう。

日本銀行も、地域金融機関について、DXの活用や業務効率化、顧客の課題解決・成長支援を重視しています。

つまり、銀行の競争相手は、もはや「隣の銀行」だけではありません。

ネット銀行、証券会社、フィンテック企業、決済サービス、IT企業など、さまざまな企業が金融サービスの一部に入ってきています。

「銀行が儲からない」の本当の意味

結局のところ、

「銀行は儲からなくなった」

という言葉は少し正確ではありません。

より正確に言えば、

「昔の銀行が持っていた収益モデルが、そのままでは維持しにくくなった」

ということです。

昔は、

「大量の預金を集める」

「店舗をたくさん持つ」

「人をたくさん配置する」

「企業や個人に融資する」

という巨大な仕組みそのものが競争力でした。

しかしネット時代には、

「大量の店舗」より「優れたシステム」

「大量の人員」より「自動化」

「立地」より「利便性」

が重要になります。

さらに人口減少によって、融資市場そのものにも構造的な変化が起こっています。

そのため、これからの銀行は、

「大きい銀行」ではなく「効率よく金融サービスを提供できる銀行」

が強くなる可能性があります。

まとめ|銀行は消えるのではなく、「銀行らしさ」が消えていく

銀行業界で起きている変化を一言でまとめるなら、

「銀行がなくなる」のではなく、「銀行という形が変わっている」

ということです。

昔の銀行は、店舗と人間を中心とした巨大な資金仲介業でした。

しかし現在は、

ネット+データ+AI+自動化

を中心とした金融サービスへ移行しています。

そして金利上昇によって足元の収益は改善しているものの、人口減少や企業数の減少による借入需要の縮小、店舗・人件費などのコスト問題は、長期的な課題として残っています。

これは銀行だけの話ではありません。

私たちが普段利用している、

  • 銀行
  • 保険
  • 証券
  • 小売
  • 不動産
  • 教育
  • ITサービス

など、さまざまな産業で同じことが起きています。

「昔は人間がやっていたから価値があった仕事」が、ネットやAIによって安く、速く、自動化できるようになる。

銀行業界の変化は、その典型例の一つなのです。

そしてこれから注目したいのは、

「銀行は次に何を売るのか?」

という問題です。

金利差だけで稼ぐ銀行から、決済・資産運用・データ・企業支援・デジタルサービスなどを組み合わせて稼ぐ銀行へ。

銀行の歴史は今、かなり大きな転換点に入っていると言えるでしょう。